近年、PRP（Platelet-Rich Plasma）療法、幹細胞治療などの再生医療を導入している医療機関が増えてきました。
しかしながら、「申請方法が分からない」、「負担が大きく個人院では難しいのではないか」などの不安から、再生医療の導入を諦めるというケースも少なくありません。
そこで、本記事では再生医療を導入する際の申請手順や注意点について解説すると共に負担軽減を目的とした「再生医療の導入支援サービス」をご紹介します。
再生医療を始める際の手順
再生医療等の初回申請手続きの流れは大まかに以下のようになります。
以下では、具体的な手続きをステップに分けて解説いたします。
1情報収集および資料準備
再生医療等提供計画書作成のための情報を収集します。
必要書類等
- 医療機関の基本情報（開設時は登記事項証明書が必要となる場合があります）
- 細胞加工物（PRPや幹細胞等）の製造方法
- 審査時の必要書類
- 医療機関の図面 等
2特定細胞加工物製造届書の作成
PRPなど院内で細胞加工物の製造を行う治療の場合は、構造設備や製造管理・品質管理の方法について、当局のWEBサイト[1*]にて所定の手順で届出を行う必要があります。再生医療等提供計画に比べると容易です。
手続きが終了すると、「細胞培養加工施設の施設番号」が付与されます。
細胞の加工を外部に委託する場合（脂肪由来幹細胞治療等）を行う場合は特定細胞加工物製造届書の作成は不要です。
3認定（特定認定）再生医療等委員会の決定
審査を依頼する再生医療等委員会を決定します。審査の基準は法令で定められていますが、各委員会によって、独自の基準や審査費用が設定されているので、委員会の選択が医療機関にかかる負担やコストに大きく影響します。
具体的には以下の点に注意が必要です。
- 審査手数料（初回審査、定期報告審査、その他 等）
- 審査方法（出席審査、書類審査 等）
- 審査時の必要書類
- 委員会の開催頻度
- その他、初回申請で不備があった際に追加で審査料が発生するか など
再生医療委員会の一覧は当局のWEBサイト[1*]から確認可能です。
4再生医療等提供計画書の作成
当局のWEBサイト[1*]を参照し、再生医療等提供計画（様式第1の2）と、その他の必要となる添付書類を作成します。
再生医療提供計画作成のため、予定している治療の安全性・妥当性を客観的に確認できる文献をもとに論理的に文章を構成する必要があります。また、添付資料はテンプレートのない書類が多く、関係法令・通知等を見ながら作成する必要があり、相当の労力がかかります。
5認定（特定認定）再生医療等委員会による審査
審査を依頼している委員会のルールに従って、用意した書類を提出します。承認を得ると、「意見書」「議事録」「再生医療等提供基準チェックリスト」が送られてきます。
6厚生局への書類提出
当局のWEBサイト[1*] にて「意見書」を添付し登録を完成させます。完成後、所定の手順で厚生局に書類を提出します。
7治療開始
厚生局の書類の受理後、当局のWEBサイト[1*]にて計画番号が発行されると治療開始可能となります。
再生医療等提供計画の初回審査時に必要なコスト
初回審査時にかかるコストは主に以下の3つの要素で構成されます。再生医療の分類やどの再生医療等委員会へ審査を依頼するか、どの書類作成を行う事業者へ依頼するかにより大きく総額が変わってきます。
1再生医療提供計画審査
再生医療等委員会毎に審査料が設定されており、一般的に再生医療の分類によって審査料に差が設けられています。
再生医療等提供計画審査料（初回審査）の相場（税別表記）
- 第2種再生医療等：450,000～601,000円（中央値507,000円）
- 第３種再生医療等：247,500～400,000円（中央値300,000円）
以下WEBサイトの公開情報を集計（2024年5月6日）。第一四分位数から第三四分位数を相場として表記。[2*][3*]
2申請書の作成及び提出代行
申請に必要な書類の作成、書類提出の代行費用。自院内で行うこともありますが、作成する書類の量が膨大なため、行政書士などによる代行作成が頻繁に行われています。提出する書類の難易度により各事業者が価格設定しています。また、特定の細胞培養加工施設の脂肪由来幹細胞ケースや治療の種別によっては対応を行っていない事業者もあり、確認が必要です。
費用については、WEBサイト上に公開されていないケースも多く、各事業者によってかなりばらつきがあるため、直接事業者に確認する必要があります。
一般的にPRP療法などの広く利用されている治療は相対的に安価ですが、脂肪由来幹細胞等の場合は150万以上かかるケースが散見されます。
3備品
目的とする治療により必要な備品は異なりますが、よく用いられている治療法に必要な備品についてご紹介します。
PRP療法で必要になる可能性のある備品
使用するキットによってはこれらが不要なものございます。
| 遠心機 | 血液の加工PRPの調整に使用します。 | 30万円程度～ |
|---|---|---|
| クリーンブース | PRPの調整に使用します。 | 5万円程度～ |
脂肪由来幹細胞治療等の細胞治療で必要になる可能性のある備品
細胞加工を依頼する事業者によってこれらが不要な場合もございます。
| 遠心機 | 細胞懸濁液の洗浄のため使用する場合があります。 | 30万円程度～ |
|---|---|---|
| ボルテックスミキサー | 細胞懸濁液の攪拌のため使用する場合があります。 | 2万円程度～ |
| ブロックバス | 細胞懸濁液の解凍のため使用する場合があります。 | 30万円程度～ |
| 低温フリーザー | 採取した組織や細胞懸濁液の保管のために使用します。 | 50万円程度～ |
再生医療等提供計画の初回審査時以外でコストが発生するタイミング
再生医療の実施に関してコストが発生するタイミングは大きく分けて以下の通りとなります。
1定期報告審査時
再生医療等提供計画の受理日から、1年毎に再生医療の提供状況について書類を作成し、再生医療等委員会の審査を依頼する必要があります。
定期報告を行う委員会を変更することはできないうえ、毎年必ずかかるコストなので、治療を開始する前の再生医療等委員会の選択はコスト削減を考えるうえで重要です。
定期報告審査費用
定期報告審査費用は初回の審査と同様に再生医療等委員会毎に審査料が設定されており、一般的に再生医療の分類によって審査料に差が設けられています。
再生医療等提供計画審査料（定期報告審査）の相場
- 第2種再生医療等：150,000～300,000円（中央値240,000円）
- 第3種再生医療等：100,000～200,000円（中央値143,750円）
以下WEBサイトの公開情報を集計（2024年5月6日）。第一四分位数から第三四分位数を相場として表記。[2*][3*]
申請書の作成及び提出代行
申請に必要な書類の作成、書類提出の代行費用。作成が必要な書類が初回審査に比べてかなり少ないので、一般的に自院内で行われています。行政書士などによる代行提出を依頼することも可能で数万円程度が相場となっています。しかし、事業者によって価格にかなりばらつきがあり、100万円近くかかるケースもあります。
2その他の場合
- 提供計画の内容を変更するとき 【変更届】
- 提供計画を実施している中で、疾病等（疾病、障害若しくは死亡又は感染症）が発生したとき 【疾病等の報告】
- 再生医療の提供を中止するとき 【中止届】
- その他
